ウエディングドレスで登場した2010年第61回NHK紅白歌合戦での浜崎あゆみ
ウエディングドレスで登場した2010年第61回NHK紅白歌合戦での浜崎あゆみ
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 テレビのバラエティ番組は基本的に俗っぽい場所だとされていて、制作者にも出演者にも視聴者にもその前提が広く共有されている。普段はバラエティ番組に出ることがない俳優、アスリート、歌手などがごくまれに顔を出すときには、「上の世界」から降りてきた人というふうに扱われ、もてはやされることになる。

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 しかし、これはバラエティ番組側が意図的に上の世界の人を崇め奉るという構図を作っているだけであり、本当の意味で明確な上下関係があるわけではない。バラエティ番組というのは恐ろしいもので、出演する人を一瞬にして俗っぽい存在にしてしまう。そこに足を踏み入れた時点で、高嶺の花だった俳優やアスリートも幻想をはぎ取られ、俗世の泥にまみれることになる。

 しかし、時として、本当の意味で格上とされる人がバラエティ空間に迷い込んでくることがある。バラエティ番組に出るだけでニュースになるような別格の存在が現れた場合、そこにある種のひずみが生じることになる。

 その典型例が、4月5日放送のかまいたちがMCを務める深夜バラエティ『かまいガチ』(テレビ朝日)に浜崎あゆみが出演したことだ。プライベートでも浜崎と交流があるというかまいたちの山内健司が、本人を招いて「浜崎あゆみデビュー25周年パーティー」を開催するという企画だった。

 深夜バラエティに似つかわしくないゴージャスな衣装に身を包んで姿を現した浜崎は、本物のセレブリティというよりはそのパロディのような不思議な雰囲気をかもし出していた。端的に言うと、叶姉妹みたいだった。

 誤解を恐れずに言えば、今の浜崎あゆみはものまねタレントと区別がつかない。そのぐらい独特の神々しい存在となっている。長渕剛や矢沢永吉がたまにテレビに出るときにも同じことを感じる。逆説的だが、本物であるというのはそういうことなのだろう。

 浜崎は、歌手として出てきた当初は主に若い女性に支持される存在だった。自分のことを「あゆ」と呼び、たどたどしいしゃべり方をするマイペースな若者っぽさがあった。そんな彼女はみるみるうちに成長を遂げ、スターへの階段を駆け上がっていった。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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