マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
この記事の写真をすべて見る
イラスト:大嶋奈都子
イラスト:大嶋奈都子

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

【今週のイラストはこちら】

*  *  *

 藪(やぶ)から棒だが「ウンコ」について書きたい。

<さっきまで体の中にいたのに 出てきた途端 いきなり嫌われるなんて やっぱりお前はうんこだな>

 森山直太朗の「うんこ」という歌である。ご存知だろうか。

 タイトルのショッキングさとは裏腹にとても美しいメロディの、荘厳な曲。この曲が凄いのは、別に、笑わせようとか、何か奇をてらった意図があるといった風ではなく、人間の営みに対する「そのまんま」で素直な態度だと思う。通常、人は「ウンコ」に対してここまで素直でいられない。これをあの美声で、たったの42文字、曲尺1分20秒だけで、人間の業を優しく包み込むように歌い上げるのである。

 踏まえて、本題。

 金に左右されない人生をそろそろ考えられないものだろうか。そんなことを五十前にして思うのである。まだまだ子育て中で金はいるし、老後は心配だし、芸能人としてはCMの年間契約も欲しい。そうなると預金だの、いや、投資だの、財テクだのということになる。でもリスクを抱えるのは面倒だから、結局、漠然と金をためるか、ノーガードのまま税金を納めるかになっていた。こういう悩みは、私が小金持ちになったから出てきた問題。一応言っておくと、私がようやく稼ぎ出したのは四十になった頃からである。まともな暮らしを手に入れてまだ8年程度なのだ。だのに、気づけばもう五十手前、これから稼ぐ金なんかたかだか知れている、ただでさえ明日をも知れぬ「虚業」、さらに言えば、芸能人として死にたくない!という警戒心よりも、もはや生き物として死んでしまう可能性が高くなってきた。

 多く見積もっても生きて、あと20年ぐらいなんじゃないか?

 結果、私は「金」に対して守りに入る。芸人界(お得意様)からも嫌われないように気を使いながら、そこからいただく小銭を大事に大事に手で掬い、溢れないように「自分の老後」というバケツに運ぶのである。

 もうウンザリだ。

次のページ