撮影/写真部・小山幸佑
撮影/写真部・小山幸佑
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 一口に仲間と言うけれど、正社員と非正規が一緒に働く時代。飲み会は、現代の職場が抱えるゆがみが表面化する場でもある。

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 9月のある日。都内の事務管理会社で事務職として働く契約社員の女性(41)の席に、正社員がやってきて言った。

「来月、送別会があるんだけど」

 親会社から一時期出向してきていた人が定年退職を迎えるという。

 女性が「会費はいくらですか」と聞くと、正社員は「1人6千円で」と軽く言い放った。

 女性は絶句。仕事中だった周囲の契約社員たちの腰もふっと浮きあがった。

「と、とりあえず(契約社員の)出欠をまとめます」

 と返事をしておいたが、見渡すとみんな手で小さく「×」のサイン。9月は30日までしかない上、祝日が2度もあり、18日勤務だったから給与はいつもの月より2万円前後も安い。手取りは15万円いくかどうか、だ。6千円あったら何食食べられるかと考えてしまう。

 ほかの契約社員も同じのようで、「みなさん欠席で」と返答すると、その正社員は「参加してよ」「どうして?」と食い下がってきた。仕方なく事情を説明すると、「交際費ぐらい貯めときなさい」と叱られてしまった。そう言われても無理なものは無理。定年退職者には、欠席のメンバーから千円ずつ集め、心ばかりのプレゼントと寄せ書きを贈ることにした。

 そもそも職場の飲み会なんて会費が無料だって行きたくない。超就職氷河期だった2000年に大学を卒業し、派遣や契約社員を続けながら何度も正社員を目指したが、「履歴書の職歴欄が多いのが気になる」などと言われてかなわなかった。

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