「MRIによって半月板の損傷もわかるようになり、かつては『もう年だから』で済まされていたひざの痛みも診断や治療ができるようになっています。とくに半月板後根断裂は痛みが強く、しゃがめなくなります。加速度的に骨の変形が進むことが多いため、関節鏡視下手術という低侵襲な手術で損傷した半月板を縫合することもあります」
関節鏡視下手術はひざの2~3カ所を1センチ弱ほど切開し、半月板の傷んだ部分を縫合する。損傷がひどいと切除が必要な場合もある。縫合手術後1~2カ月は松葉杖での歩行を余儀なくされるため、生活スタイルや職業によっては選択が難しいケースも多い。手術をしない場合はどのような治療があるのだろうか。
「一度損傷し、その機能が失われた関節軟骨や半月板は元には戻らず、いまの医療技術では置き換える人工軟骨も存在しません。そのため、いまある軟骨や半月板をうまく使いながら、普段どおりの生活を取り戻すことを目指す保存療法が治療の基本です」(勝山医師)
保存療法では、痛みを抑えるための鎮痛薬やヒアルロン酸関節内注射、湿布薬、温熱療法などとともに関節周囲の筋肉を鍛える筋力トレーニング、ストレッチなどの柔軟体操や関節への負担を減らす減量などをおこなう。半月板損傷後、徐々に関節軟骨や骨がすり減り、5~10年という年月をかけて骨の変形が進み、変形性膝関節症に至るケースも多い。変形性膝関節症でも約9割で保存療法がおこなわれる。
勝山医師は保存療法における「減量・筋力トレーニング・柔軟体操」の重要性を説く。
「筋力があれば、膝関節のクッション性が多少損なわれていても、痛みが緩和できることがあります。減量と筋力トレーニング、柔軟体操などのリハビリこそが痛みを改善するための大切な根本治療。ひざの筋力と柔軟性が高まれば痛みは落ち着き、薬や注射の量も減っていきます」
筋力トレーニングは、ひざの痛みや腫れを薬で抑えながらおこなうと効果的である。現在、薬の種類はかなり増えていて、選択肢は多くなっているという。