

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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10月16日から開催された「シーテックジャパン」に、ローソンは小売業として初めて出展しました。シーテックは、ITとエレクトロニクスの最先端技術が一堂に会する、アジア最大級の国際展示会です。私は、デジタル技術の革新で「未来のコンビニ」を作りたいとの思いから出展を決意しました。
以前にもお伝えしましたが、私は今年をローソンの「デジタル元年」と位置づけています。深刻な人手不足の中、リアル店舗の価値をどう維持していくかは、喫緊の課題。基本的な運営はすべて自動化して、クルーさん1人でも運営できるような実験店舗を目指したい。シーテックに出展したようなレジ不要のウォークスルー決済など、デジタル技術がサポートする形で、店内の業務量を大幅に削減していきたいと考えています。2025年を目指して改革を進めるつもりです。
ただ誤解なきようお伝えしたいのは、私が目指す「未来のコンビニ」は無人ではなく、人のハートとハートがつながる、ぬくもりがあるお店です。それこそがEC(電子商取引)にはないリアル店舗の価値だと考えています。
AIではなく人同士が「おはようございます」と言葉を交わし、地域の子どもからお年寄りまで集まれる場所。災害などで不安なときも、そこに灯りがあって人がいるという安心感をマチの皆さんに持って頂ける場所。この日本に、そして世界中にそういうお店を一つでも増やしていきたい。人のぬくもりを大事に、そしてそれを実現するためにデジタル化による省力化にチャレンジしていきたいのです。
デジタルコンシェルジュに健康相談したり、調理ロボが炒飯を作ったりするけれど、そこに人がいて会話があって、ほっこりもできる。先端技術が詰まっているけれど、中心には人とのふれあいがある。そんなお店を目指します。
私たちが想定するデジタル化は、まだまだ「たたき台」。今回の出展を機に、より向上させたいと考えています。
※AERA 2018年11月5日号より