「17年前にこの音楽祭を始め、今でも続いていることが誇りです。両親と妹も参加して指導に当たっています」
11月1日から8日まで日本で公演するエルプフィルは1945年創立。たびたび来日しており、旧名で親しんだファンも多いだろう。とりわけドイツ音楽には定評がある。名匠ギュンター・ヴァントによって82年から20年にわたって鍛えられた深く美しい音色には、何度も共演してきたギルバートも太鼓判を押す。
今回も、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、ワーグナー、マーラーなどのドイツ音楽を中心に、「オケが輝く音楽」(ギルバート)でプログラムを組んでおり、京都を皮切りに東京や鎌倉、名古屋の各ホールで演奏する。
エルプフィルの本拠地は、昨年オープンしたエルプフィルハーモニー・ハンブルク。斬新なデザインで、ハンブルクの新たな象徴となり、話題を集めている。コンサートホールの音響は日本の永田音響設計の豊田泰久が担当した。
「私の友人である豊田さんは、とてもクリアでフレキシブルな音響を作ってくれました。音楽家が演奏したいと思った通りの正直な音が聞こえてくるのです。オケとホールの関係性はヴァイオリニストとヴァイオリンの関係と同じ。ホールがオケの個性を作ると言ってもよいでしょう」
エルプフィルにはドイツ人の団員が多く、「ドイツ音楽を魂の中から演奏できるはず」とギルバートも話す。
「今はインターネットでさまざまな音楽が聴ける時代ですが、生演奏は人間同士のふれあいであり、その瞬間にしか成立しないもの。ぜひ多くの方にその喜びを体験していただきたいと思っています」
(文中敬称略)(ライター・千葉望)
※AERA 2018年10月29日号
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