Alan Gilbert/1967年生まれ。現在はロイヤル・ストックホルム・フィル桂冠指揮者。今年4月から東京都交響楽団の首席客演指揮者にも就任、12月に再び来日して共演する予定(撮影/品田裕美)
Alan Gilbert/1967年生まれ。現在はロイヤル・ストックホルム・フィル桂冠指揮者。今年4月から東京都交響楽団の首席客演指揮者にも就任、12月に再び来日して共演する予定(撮影/品田裕美)

 日本に深い縁がある指揮者アラン・ギルバートが11月、ドイツの名門オーケストラを率いて来日する。音楽一家に育った子ども時代の思い出や、公演に懸ける思いを聞いた。

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この秋、多くの名指揮者に率いられ、海外有名オーケストラがやってくる。なかでも、昨年まで8年間、米ニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督を務め、巨匠の仲間入りをしつつあるアラン・ギルバートは、日本でもファンの多い人気指揮者だ。2019年秋にドイツの名門NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(旧名・ハンブルク北ドイツ放送交響楽団)の首席指揮者に就任することが決まっており、11月に同フィルを率いて来日する。

 ギルバートは米国人の父と日本人の母を持つ。父・マイケルと母・建部洋子は共に元ニューヨーク・フィルのヴァイオリン奏者で、妹・ジェニファーもヴァイオリン奏者として活躍する音楽一家だ。彼自身、今でもヴァイオリンやヴィオラを弾く。

「子どもの頃から家の中にはいつも音楽があふれていました。両親の仕事柄、オーケストラの中で過ごしたようなもの。いつも家族で合奏を楽しみ、『音楽をやれ』と言われたことはないけれども、音楽は人生そのものだと感じることができました。アートに触れたり、シェークスピアの芝居を見たり、あちこち旅行に行ったりと、さまざまな経験をさせてもらった上で音楽を仕事に選んだのです」

 母が日本人だったことは、人格を形成する上で大きな影響をもたらしたという。子ども時代、夏休みはいつも妹と一緒に母の実家で過ごした。日本語が話せ、日本食が大好き。いつ来ても心地よく過ごせるといい、日本の音楽家たちとの関係も良好だ。

 01年には友人である指揮者の大友直人とともに、国際教育音楽祭「ミュージック・マスターズ・コース・ジャパン(MMCJ)」を創設。室内楽を中心に、世界から集まる若手音楽家たちの育成に力を注いできた。現在も創設音楽監督を務めている。

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