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 彼いわく、ドーナッツ店に入って店長を呼び、「自分はGSBの学生だが、60個のドーナッツをタダでくれたら、クラスメートたちに配る。彼らは全員CEO候補なので、将来クリスピークリーム社の株価を上げてくれるかもしれないことを考えると、安い投資だと思わないか?」と説得したとのこと。交渉では、この厚かましさが必要なのかと、感銘を受けるとともに、相手とのウィン・ウィン関係を構築することで、交渉はうまく成立することを認識した。

 さて、STPプロジェクトへの出資参画にあたり、東京電力は米国原子力投資会社TEPCO Nuclear Energy America LLCを設立し、NRGエナジーと連携してプロジェクトを推進する体制を着々と整えることになる。

立岩健二
京都大学・同大学院にて原子力を専攻し、1996年東京電力に入社。新型原子炉の安全設計等に従事していた2000年代初頭、「黒船」エンロンの国内電力市場への参入により業界に衝撃が走ったことをきっかけに、日本のエネルギー基盤を支えられる「技術のわかる経営者」を目指し、2004年にスタンフォードMBA取得。東電復帰後、日本の電力会社初となる海外原子力事業への出資参画を主導するも、東日本大震災で白紙撤回となる。国際機関と連携して福島第一原発事故対応に奔走するかたわら、日本のエネルギー基盤を「アンチ・フラジャイル」に立て直すための構想を検討。この一環として、「分散コンピューティングによる再生可能エネルギーの導入量最大化と電力系統の最適化」事業を考案。当事業を社会実装するプラットフォームとして、株式会社アジャイルエナジーXを2022年8月に東電の社内ベンチャーとして設立し、代表取締役社長に就任。