【浄土宗龍岸寺住職】池口龍法さん(38)/浄土系アイドル「てら*ぱるむす」のプロデュースなどで知られる。著書に『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』(講談社)(撮影/秋山謙一郎)
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 人々を苦しみから救うのが仏さま。宗教から縁遠くなり、漠然とそう考えるぐらいだ。深刻化する「宗教離れ」を食い止めようと、新たな発想で仏教の効用を訴える僧侶たちを紹介する。

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 みずからがパフォーマーとして表に立たず、「仕掛け人」としてプロデューサー的に仏と若い世代、そしてシニア層との縁を紡いでいるのが京都の浄土宗龍岸寺住職の池口龍法さん(38)だ。

 2009年のフリーペーパー発刊を手始めに、「念仏フェス」と題したイベント「十夜祭」「超十夜祭」や浄土系アイドル「てら*ぱるむす」の運営まで、つねに現世社会でも注目を浴びる半歩先の活動を手掛けてきた。

「お寺の数はコンビニの2倍といわれています。まずは関心を持ってもらうことが大事です」

 実際、町にはお寺はたくさんある。だがそのほとんどをわたしたちは見過ごしている。だからお寺がどこにあるのか、案外わからない……。そんな実態がそこかしこで見受けられる。

「人間の耳とか目は、興味がないものは聞こえない、見えないものですから」

 日頃から「お寺とのつきあいがない」がために、たとえば身内に不幸があったとき、お坊さんを呼ぶこともできない現状を、池口さんは「文化的損失」だと語る。

「仏教は2500年分のリソースを持つ歴史的な哲学です。向き合えば何かが見えてきます」

 それだけ魅力ある仏教といえども、ここ二十数年来続く著しい「宗教離れ」で、人が寺に集まらないのは、寺側が人々に「来てもらう」ための努力を怠ってきたことも大きいという。

 こうして宗教全般が危機的状況にあるなか、「一緒に仏教というものを考えてみませんか」というコンセプトではじめたのが一連の活動である。その活動は肩ひじ張ったものではなく、若き僧侶による自然体のものだ。

 池口さん曰く、「眺めのいい景色をともに見てくれる道連れを探す」感覚なのだそう。

 いま池口さんの「道連れ」は70代、80代といった、それまでの檀家に加えて、アイドル、アイドルの追っかけ──アイドルヲタクまで多彩な顔触れが集っている。その集まった人たちが化学反応を起こすように、互いにいい刺激を与えあっているとか。

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