その後数カ月かかって、自宅は解体・撤去された。井上さんたちは大阪に避難していたが、作業に立ち会うために家族で熊本へ舞い戻ったという。
「ブルーシートを広げて、拾ったものを泣きながら並べて……。あの作業は忘れられません。でも、家族みんなで大切なものを捜せたのは本当に良かった」
撤去作業者とのトラブルも見られたという。
「業者から立ち会いを拒否されて担当を代えてもらった人や、知らされた日時に行ってみたら、すでに更地になっていたという人もいました」(井上さん)
西原村役場によれば、解体・撤去の棟数は申請ベースで1770棟。震災後約2年半経過した現在(9月13日時点)で残すところあと2棟。基本的に住民立ち会いのもとで作業するよう指導しているというが、特に震災直後は混乱続きで管理しきれない部分もあったという。
少しでも失うものを少なくするためには、財産を管理する情報デバイスと、財産を回収するための情報収集が大切なようだ。
※AERA 2018年10月1日号