ANEW Holdings 春元富美子さん(50)/1991年、コメルツ銀行入行。MBA取得。ソシエテ・ジェネラル証券会社で30歳で管理職に。LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンに転職し、Fendiの財務責任者など。2007年に退社し翌年、出産。12年から仕事再開(撮影/写真部・小山幸佑)
ANEW Holdings 春元富美子さん(50)/1991年、コメルツ銀行入行。MBA取得。ソシエテ・ジェネラル証券会社で30歳で管理職に。LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンに転職し、Fendiの財務責任者など。2007年に退社し翌年、出産。12年から仕事再開(撮影/写真部・小山幸佑)
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 主婦が再就職を目指すにあたって、壁となるのが「時短」だ。キャリアを積んだ能力の高い女性も、やはりその壁にぶつかるという。

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 元1千万円プレーヤーが、出産後、5年間の仕事のブランクを経て就いたのは時給970円のパート。テニスクラブの受付兼経理だった。

 外資系投資銀行やLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンに勤務してきた春元(はるもと)富美子さん(50)。海外でMBAを取得し30歳で管理職となり、主に企業財務に従事してきた。しかしあまりの激務に、38 歳で退社し翌年、出産した。

「専業主婦が仕事に就こうと思っても、保育園などの預け先が確保できないため『時短』を前提にせざるをえません。ブランクの不安もあって、地元の週3日のパートから始めました」

 1年働くと自信もつき、週4日の派遣の仕事に転じた。が、担当するのは規格化された仕事。社員との間に引かれた一線にも寂しさを感じるようになった。

「社員になりたい、と思いました。娘は小学生になりましたが、人一倍寂しがり屋でフルタイムは難しい。『時短正社員』の求人を一生懸命探しましたが全くありませんでした」

 2016年、知人のつてでIT企業の管理部門に正社員として採用され、時短が認められた。仕事は受け身ではなく裁量が広がったが、管理職になれるのは基本的に生え抜きの若手。中途かつ時短勤務では難しい。

「私が長い間就いてきたのは管理職。マネジメント思考が抜けず、それが自分の適性であり、やりがいだと気がつきました」

 今年に入って自分のキャリアにまさに合致する求人に出合った。日本企業の海外進出を支援するベンチャーで、高い英語力と投資銀行などでのマネジメント経験を求めていた。採用した「ANEW Holdings」の藤永裕二代表(43)は言う。

「競争相手は海外の企業。スピードと柔軟性が必要で、どの時間帯にどこで働くかは大した問題でない。大事なのは成果」

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