生まれつきの疾患や病気、事故で顔や体に異変が出る。「容貌障害」を「見た目問題」と呼ぶ動きが広がっている。「見た目問題」とは、生まれつきの痣や、事故や病気による傷、火傷痕、脱毛など「見た目」に症状のある人々が、差別や偏見のためにぶつかる問題のこと。生きづらさは見た目そのものではなく、「世間」によっても生じるという意味を込め、いま、当事者の多くはこの言葉を使っている。
* * *
看護師として働く30代女性は、レックリングハウゼン病(神経線維腫症)がある。国指定の難病で、皮膚をはじめ、骨、目、神経系などにさまざまな病変を生じる。
女性は生後しばらくして顔半分にカフェオレ斑が出て、患部に毛が生え、3歳から手術を繰り返した。小学生からレーザー治療も始めた。痛みを伴ったが、「よくなる」と信じて頑張った。
いつしか、患者の気持ちに寄り添う看護師になりたいと考えるようになった。
高校生で化粧を始め、患部をカバーしたが、厚塗り感が出たり、汗で取れたり、「葛藤の繰り返し」。もっと治したいという思いも強くなった。19歳で、鼻にできた腫瘍を取る手術を全身麻酔で受けた。手術前日は怖くて泣いた。「絶対によくなる」と信じ、医師もそう言った。だが、結果は「あまり変わらず、先が見えない感じ」。顔の痣に胸から血管と骨を移植する大手術もし、その後は修正手術を13回繰り返した。
「働きながら、『もう少しよくなりたい』と手術を優先してきたけれど、20代後半になって、お金と時間をかけて手術にこだわる人生ってなんだろうと、治療を一度ストップして、看護師を目指すことにしたんです」(女性)
やると決めたら、諦めずに頑張る「頑固な性質」。働いて学費を貯め、10倍の倍率を突破し、看護学校に入学した。入学時の自己紹介で、顔に良性の腫瘍があり手術を繰り返し、その過程で看護師を志望したことを話した。
それでも、女性は「いまも受容できていない部分があるのかも」と語る。進行性のため下がってくる腫瘍周辺にテープを貼り工夫しているが、「汗で化粧が取れたら」と勤務中も気にかかる。