


情報弱者。蚊帳の外――。台風や地震などの自然災害が相次ぐ日本で、被災地に暮らす外国人たちの本音だ。在留や観光で増える外国人にどう災害情報を伝えるか。課題は多い。
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「大阪府枚方市に住んでいますが、家がたびたび揺れて、屋根も壊れました。少しパニックになりました」
英語で筆者の取材に答えたデアさん(26)は、6月にインドネシアから語学留学で日本に来たばかり。インドネシアでは地震被害はよくあるが、台風は来ない。9月4日に四国や関西を縦断した台風21号の暴風、豪雨被害は、デアさんにとって初めての経験だった。
台風直撃の2日前、インドネシア大使館の情報サイトをチェックし、非常に強い勢力で警戒が必要なことは知っていた。
「地震に対する心の備えはありますが、台風は初めてだったので、事前に情報を集め、警戒していました。それでも、こんなにすごい状態になるなんて、想像すらできませんでした」
まだまだ日本語は不慣れだ。特に漢字は難しく、児童用の本などを使って勉強している。自治体や報道から出る災害情報は漢字が多く、ほとんど理解できない。緊急時に頼りになるのは、日本在住のインドネシア人でつくるコミュニティー内での情報共有と、知り合いの日本人たちの支えだという。
事前に食べ物を買い込み、外出はしない。窓のシャッターを閉めて、家の外に置いてあるものは飛ばされないようにする。緊急時でなければ携帯電話はなるべく使用しない――。
友人や語学学校の職員らが教えてくれたことだという。どこに避難所があるのかも知っている。事前情報は知り合いの親切に助けられて、なんとか入手できたが、問題は台風まっただ中のリアルタイム情報の入手が簡単ではないことだった。
台風がどこに上陸するのか。自分が住む地域は今、どのような影響を受けているのか。被害は出ているのか。公共交通は動いているのか。日本語が理解できないと、一番ほしい時に生情報がすぐに入手できない。緊急時に情報が伝わらないと、被災する危険性は当然高まる。不安が募るのは当然だ。