エルドアン大統領は、16年のクーデター未遂以降の非常事態宣言下で、約15万人を拘束し、政権に批判的なメディアを閉鎖する強硬策を進めた末、今年6月の大統領選で再選した。同大統領と「同じ性質」と批判されるトランプ氏が、民主主義の「守護神」を自負してきた米国の大統領になってから1年7カ月、暴走ぶりはますます顕著となっている。「強さ」を演出するための「敵」づくりに躍起だ。

 貿易赤字が「不公平」として、中国や欧州連合(EU)などに対し、鉄鋼・アルミなどへの高関税を課す報復措置に出た。保護主義が引き起こす貿易摩擦や、貿易面で有利になるよう自国通貨を安く誘導しているという持論の「通貨安発言」は、世界経済や金融市場の大きな波乱要因になっている。

 欧州とは外交面でも関係がぐらつく。パリ協定やイラン核合意からの一方的な離脱は、米国への信頼を失わせた。イランへの経済制裁を再開し、日本を含む各国にイラン産原油の禁輸を要求。従わなければ経済制裁の対象にすると警告する姿勢は、「トランプ帝国主義」そのもの。中国とは泥沼の報復関税合戦になり、どちらも引けないまま、我慢比べの貿易戦争状態だ。

イランでは反米感情に火が付き、原油の輸出ルートであるペルシャ湾で軍事演習を実施。ホルムズ海峡の閉鎖をにおわすなど安全保障面でもきな臭さが漂う。ロシアが旧ソ連以降最大規模の軍事訓練の実施を9月に極東で予定し、中国軍が初参加するなど、米国を意識したとみられる軍事的な動きも目立つ。(編集部・山本大輔)

AERA 2018年9月3日号より抜粋