ここで新作の評価が高い落語家・二ツ目の三遊亭粋歌さん(42)に登場していただこう。

「古典落語の難しさは、名人はじめ、いろいろな人がやってきた、そのすべてと比較されるところです。新作の大変さはゼロから自分でつくらなくてはいけない苦しさ。それぞれに難しさが違うので、簡単に比較はできませんね」

粋歌さんが新作落語をつくるようになったきっかけは、円丈さんの著作だった。

「二ツ目になった頃、自由が増えた分、迷いが出てきました。そんなときに円丈師匠の『ろんだいえん 21世紀落語論』を読んだら、<落語を理解するためには落語を作ることだ>とあって、そうか!と。続けて<作ったら、やってみるといい>。そうか! そこから新作をつくるようになりました」

 粋歌さんは「寄席でやっても違和感がない新作をつくりたい」と言う。

「前座から始まって、トリの師匠に向けて雰囲気が上がっていく寄席が大好きなんです。寄席のなかで、しっくりくる新作を書くのは難しいですが、挑戦していきたいと思います」

 さて「炎上まつり」の当日、羽光さんの「失われたキンタマ」も軽みのある高座に仕上がって、ウケていた。

「回を重ねるごとに若い女性のお客さまも増えてきました。年齢、性別に偏りがないので、場内が爆笑すると、きれいに『ドッ』とわく。いいお客さまです」(亀之園さん)

 時代と密接な関係を持つ新作落語。日々、奮闘する落語家が生み出す新作のなかから、未来の名作が生まれてくる。(ライター・矢内裕子)

AERA 2018年8月27日号より抜粋