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――米国に積極的な指導力がない現在、格差を減らすために、各国政府はどのような措置を取るべきでしょうか。もちろん、先進国だけではなくて、発展途上国についても、です。

 その点でカギを握るのは、アフリカです。インドや中国のような、アジアの比較的貧しかった国々の成長によって、この30年間で世界の不平等が劇的に減少しました。

 この地域には30億人の人がいるわけです。ただ、中国は(経済成長したからといって)、もはや世界的な格差の削減には貢献しない水準にまで達しました。

 現在、中国の影響は、世界の格差という観点からはプラスでもマイナスでもない、中立的なものになっています。しかし、10年後、あるいは5年後には、中国は逆に世界の格差を広げる国となるでしょう。

 そこで、問題はアフリカになります。もしアフリカが経済的にほかの国々に追いつかず、同時に人口が最も増加する大陸であるなら、再び、世界の格差は拡大することになります。これを考えれば、注目すべきは「アフリカ諸国の成長」ということになります。

 もちろん、これはこれら諸国自身の問題です。しかし世界は、国際通貨基金(IMF)であれ、世界銀行であれ、中国でさえも巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げ、アフリカに注目しています。米国も、一帯一路構想をまねるかのようにアフリカへの投資を図っており、アフリカへの援助も進めるはずです。

 アフリカの主要国をみると、例えばエチオピアは10年以上にわたって高い成長率を達成し、非常に成功している国なのですが、比較的落ち着いてきているとは言え内戦状態が継続しています。ほかにも、例えばナイジェリアやスーダン、コンゴ民主共和国、エジプトなど成長が必要な大国があります。

 こうした国々はアジアの経験を真似る、あるいは再現する必要があります。先進国と発展途上国の間の格差を埋めていくことは、非常に重要な課題だと私は考えています。

ブランコ・ミラノビッチ
経済学者。
1953年生まれ。「エレファントカーブ」のモチーフによって先進国中間層の所得の伸び悩みを指摘し、所得分配と不平等に関する研究で世界的に知られている。世界銀行調査部の主任エコノミストを20年間務めた経験もある。主な著書に、『不平等について』『大不平等』『資本主義だけ残った』(みすず書房)など

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