食事によって体調に影響があるだけでなく、仕事などのパフォーマンスが変わることも。飽食の時代、現代人はもっと食に関する正しい知識を得る必要がある。「体にいい」と言われるとすぐに飛びつく人が多く、あまたの食材がブームになってきた。ただ、科学的根拠までを理解している人は少ない。
【図表】こんなブームがあったの?食や健康にまつわるトレンドの変遷はこちら
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ずばり、健康な食事とは何か。今話題の『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』の著者で、UCLA内科学助教授の津川友介医師に聞いた。
「日本人の死因の上位、脳卒中や心筋梗塞、がんのリスクを下げると考えられる食事が、健康によいと考えてよいでしょう」
脳卒中やがんに効果があるとされるのは、地中海食だ。約7500人を対象にした大規模研究の論文が近年に発表されたほか、多くの先行研究もある。
「地中海食の中心は、オリーブオイル、ナッツ、魚類です。これらの食材は、脳梗塞と心筋梗塞のリスクを明らかに下げ、乳がんや大腸がんのリスクも下げると研究で証明されています」
健康に近づくには、これらの食材が効果的というのはわかったが、例えば、オリーブオイルをほかの油に置き換えてはいけないのだろうか。
「バターは健康に悪いという複数の信頼できる報告があります。最近人気のココナツオイルはまだデータが不十分ですが、現時点ではオリーブオイルよりは健康に悪く、バターよりは健康によいと考えられています」
では、和食はどうか。漠然と健康食と信じている人も多いはずだ。だが、津川医師によると、「和食が健康によい」というエビデンスは弱いという。
「欧米に比べれば肥満が少ないので、ヘルシーなイメージがあるのかもしれません。が、主食である白米の摂取量が多い、味噌汁、醤油、漬物などで塩分過多であるという2つの問題があります。日本食と健康に関する、信頼できる研究結果が出るまで、過信は禁物です」
2013年に世界187カ国の人の食事中の塩分摂取量を比較した研究によると、日本人の塩分摂取量は、1日平均で男性13.0グラム、女性11.9グラム。世界平均は10.1グラムで、世界保健機関(WHO)の設定する1日の塩分摂取量の目標値は5グラムだ。
塩分過多は、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、動脈硬化や腎機能障害、がんのリスクを高めるとされている。
(編集部・熊澤志保)
※AERA 2018年8月27日号より抜粋