「相手の人格を尊重しないという意味では、男女関係ない。『男性記者は男芸者であれ』という言葉があるが、これは相手に迎合しろということ。それもセクハラ被害と同じ構造だと認識してほしい」(上谷さん)
21日には「メディアにおけるセクハラを考える会」による調査結果が公表され、社内での被害が40%という結果が出た。代表で大阪国際大学准教授の谷口真由美さんの元には、男女双方のメディア関係者から「女を武器にしてネタをとってきた記者もいるだろう。それなのにいまさら被害者ぶるのか」という声が寄せられたという。
「そういう方がいないとは言いません。ただし、それを理由に苦しんでいる女性の声を出さないというのは、その声を殺すことになると思います」
グローバルにビジネスを展開する企業では、ハラスメント対策は危機管理の観点からも重要という認識が定着しているが、それと比較すると、メディア関係者の意識は低い。
「いかに自分たちがクローズドなコミュニティーにいるのかということに、メディア自身が気づけないままなのではないでしょうか」(谷口さん)
NHKと民放全局で出演経験がある國學院大学教授の水無田気流さんは、テレビの現場に立ち会うことでこう感じたという。
「メディアは長時間・深夜労働で、裁量型の雇用環境にあるうえ、『成果』を出すにあたってもかなり特殊な環境。テレビ局や新聞社などは、即時性と専門性が高く、制作物の社会的影響力も大きいためストレスも大きい。つまりハラスメントが発生しやすい環境なのです。そんな中、女性は会社側に都合のいい解釈を内面化して働いてきた。この問題は大きいです」
野田女性活躍担当相は28日、女性記者らと懇談。その後、今国会中にセクハラ被害防止策を取りまとめる考えを示した。(編集部・小柳暁子)
※AERA 2018年6月11日号