「現代の魔法使い」の異名を持つ科学者、落合陽一さんが手がける介護への試みが、今注目を集めている。その作品、テレウィールチェアから、テクノロジーが変える新時代の介護が見えてきた。車いすは「カメラの付いたデカいラジコン」「材料はほとんどアマゾンで調達」と言う落合流の介護へのアプローチとは。
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VR鑑賞で使うゴーグルをつけると、車いすに乗った人が見ているのとほぼ同じ風景が目の前に広がった。首を右に向けて車いすの右側を、左に向けて左側を安全確認。画面のガイドで、コントローラーのスティックを倒すと、遠くに置かれた車いすが静かに動き出した。
操作させてもらったのは、「テレウィールチェア」と呼ばれる車いすの一種だ。今もっとも注目を集める科学者、落合陽一さん(30)と、筑波大学の落合研究室が、2016年から開発をスタート。落合さんが手がける数多くのプロジェクトのなかでも、この車いすは介護関連の第1号プロジェクトとなる。
「年齢などで減ってしまった人の能力は、テクノロジーで足せばいい。介護社会や高齢化社会っておもしろいなと、興味を持ったのがきっかけ。うれしいとか楽しいなどの感情と比べても、できる、できないのほうが課題は明確でやりがいもある」
そう話す落合さんが「カメラの付いたデカいラジコン」と称するこの車いすの特徴は、今のところ大きく三つ。まず前出のVRを用いた「遠隔操作」だ。また、カメラの認識技術によって複数のテレウィールチェアがカルガモのように連なって、自動で走行する「連係操作」も可能になっている。
例えば従来の高齢者施設で、食事時間に車いすで食堂に移動するとなると、1台に1人の介護者が必要だ。遠隔操作と連係操作を組み合わせて使えば、介護者の負担は大きく減る。その分、介護者は車いすの横を歩いて、おしゃべりしながら移動するなど、介護される人と「ふれあうこと」(落合さん)に力を注いでほしいという。