暴力事件や土俵の女人禁制などスキャンダルが相次ぐ相撲界。しきたりや今後の方向性など元大相撲力士の把瑠都さんに聞いた。
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日本についてはほとんど知識がなく、エストニアから来たばかりの時は文化の違いにいろいろと戸惑いました。そのひとつが先輩後輩の関係で、出身国にはなかった文化でした。
相撲界は縦の関係が厳しい。さらに番付も関係してくる。後輩や番付が低い相手にどんな態度をとるかは、人によりますね。私は関取になった時、一番の兄弟子が付き人になったのですが、私が休んでいる時には、付き人にも休んでもらった。そうじゃない関取もいっぱいいますよ。昼寝している間に弁当を買いに行かせる、とかね。
相撲界に入ってから、いろんなしきたりがあることを知りました。その一つは、「力士は人前に出る時は髷(まげ)を結って浴衣や着物を着なくてはならない」。関取に上がって、夏の暑い時にジーパンで外に出たら、フライデーに2回撮られた(笑)。相撲協会には怒られましたよ。反省しつつ、私が考えたのは、たくさんの若い衆が私の背中を見ている。私が下手なことをしたら若い衆もそうしていいと考えるし、私が頑張れば若い衆も頑張るということでした。
今、「土俵の女人禁制」が話題になっています。相撲界には古い部分がある。今回のように人の命が関わっているような場面で「女性は土俵に上がっちゃいけない」とするのは絶対に違います。これは相撲界の話だけじゃない。小さい時からずっと「こうやらなくちゃ」に従い、道を間違えないようにして生きていると、自分の頭を動かして考える必要がない。すると、どうすべきかを自分で決められなくなってしまうのだと思います。
相撲界は、変化するべき点は変化したほうがいいんじゃないかな。私は、親方衆と関取衆がもっと意見を交わせるようにするべきだと考えています。ただし、親方を前にするとなかなか言えないこともある。だからアンケート形式にして、無記名で意見を募ればいい。そうすれば本音も出やすくなるし、なんらかのアイデアを得られるのでは? 親方衆と関取衆がもっと仲良くなって、相撲界をいい方向に引っ張っていってほしい。