

タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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セクハラ疑惑で辞任表明した福田淳一財務次官。麻生太郎財務相の“名のり出よ”発言は、ハラスメントにハラスメントを重ねるような物言いで心底腹が立ちました。私が危惧しているのは、これを機に報道機関側に「現場に女性記者を出すな」という動きが出ること。そうではなく、セクハラを許さない姿勢を明示するべきです。自らをも律して。
新聞労連は4月18日に「『セクハラは人権侵害』財務省は認識せよ」という声明を発表して激しく抗議。報道機関にも「記者に忍耐を強いる指示や黙認は、セクハラを容認しているのと同じ」と釘を刺しました。同日、財務省記者クラブも財務省に抗議文を提出。続いて民放労連も麻生大臣と財務省に対する抗議文を発表し、各メディアに徹底したセクハラ対策を行うよう要請しました。
文中では「(記者などがセクハラの)被害を受けたと安心して訴え出られるような環境も整っていない。このような歪みを是正しなければ、健全な取材活動、制作活動は難しくなる」と訴えています。
19日未明、テレビ朝日が次官のセクハラを告発した女性の一人が自社の社員だと公表し、報道局長が会見。被害を訴えた女性に上司が適切に対応しなかったことを明かしつつ、次官によるセクハラがあったと判断して、財務省に抗議すると発表しました。セクハラや理不尽な調査手法に対して、放送局が組織として抗議したのは大きな一歩です。
メディア各社は、これを機にセクハラへの断固とした姿勢を共同声明で示してほしい。これまでの取材の“常識”を変える時がきたのです。
各社は取材現場のセクハラ被害を知らないはずがありません。女性記者たちは“情報を取るためにはハラスメントにも耐え忍べ”という不文律の中で、悔しい思いをしてきました。声を上げたくても、取材源の秘匿など、記者ならではの制約もあります。
霞が関と報道機関が本気でセクハラをなくそうとしなければ、ハラスメントに泣き寝入りするしかない社会は変わりません。今が正念場です。
※AERA 2018年4月30日-5月7日合併号