対外関係は当然、自国第一主義になる。貿易赤字が嫌だから関税や制裁を武器に米製品を買えと言われれば、中国も日本も怒る。ギャラップ社の米国指導力に対する国際世論調査(134カ国・地域)は、現政権下で約10年ぶりに不支持が上回り、支持率は30%と過去最低だった。米国が孤立していく。

 一定層からの支持を確実に固めるためには、その層の主張に偏った政策をとればとるほど効果がある。大統領選でトランプ陣営が得た勝利の法則だ。

 過去の全ての米大統領選に関するあらゆる情報を管理している民間機関「The United States Elections Project」の分析によると、16年の大統領選の投票率は、初の黒人大統領誕生に沸いた08年(62.2%)以来の高水準(60.2%)だった。1億3884万人となった投票者数は過去最高だ。これは、普段は投票に行かない人の多くがトランプ票を入れたとする各種報道の分析を間接的に裏付けている。

 トランプ票の中核を占めたとされるプアホワイトらのコア支持層を維持しつつ、さらに特定の団体などからの支持票を確実に取り込もうとしているトランプ大統領。一方に偏れば、もう一方は見放すことになるが、それが移民であるなら、投票できる人は少ないから影響はない。大統領選では、移民が多く、リベラル傾向の強い大票田のニューヨーク、カリフォルニア両州を落としたが、経済的に疲弊したラストベルト(さびた工業地帯)などプアホワイトら白人が多い各州での得票を積み重ねて勝利した。強力な固定票の拡大につながるならば、批判が出ても意に介さない。こうした再選戦略がトランプ大統領の政権運営の羅針盤になっている。

 なりふり構わず再選へ突き進むトランプ大統領だが、11月の中間選挙を前にして、既に向かい風が強まってきた。学校現場で相次ぐ銃乱射事件を受け、全米で高校生らが銃規制を求めて立ち上がり、政治家に対して審判を下す選挙での投票を呼びかけている。トランプ大統領の政治生命を揺るがしかねないマラー特別検察官のロシア疑惑の捜査は今も継続中だ。大統領と不倫関係にあったというポルノ女優のステファニー・クリフォードさんが、口止め料を渡されたことを暴露したのをきっかけにして、これまで追及されなかった女性問題にも一気に火がついた。

●みんなの大統領になるより再選のための政権運営

 共和党内にも動きがある。「真実の軽視や無謀な挑発は、非常につまらない個人のためであることが多い」などとトランプ批判を続けてきたジェフ・フレーク上院議員。「他国を脅迫するトランプ大統領は、米国を第3次世界大戦へと向かわせる」などと問題提起してきたボブ・コーカー上院議員。党重鎮2人の次の大統領選への立候補の可能性に、今から関心が集まっている。

 米メディア各社は連日、中間選挙での共和党の劣勢を報じている。みんなの大統領になるよりも、自身の再選のための政権運営を選んだトランプ大統領に2期目はあるのか。大統領への評価が強く影響する中間選挙だけに、選挙戦略の効果が早速試されている。(編集部・山本大輔)

AERA 2018年4月30日-5月7日合併号