大学入試の「定員厳格化」が、受験生や大学に大きな影響を及ぼしている。大学は入学定員充足率(入学定員に対する入学者数の割合)を1.2倍までに抑えれば私学助成金が交付されていたのだが、この基準が16年度は1.17倍、17年度は1.14倍、今年度は1.1倍と年々厳しくなっているのだ。基準を超えると助成金は全額カットとなるため、各大学は基準内に収めるべく、奮闘している。
【図表で見る】大都市圏私立大学50校の志願者数と合格者数の推移
データを見ても、その傾向は一目瞭然。昨年、今年と大都市圏のほとんどの私大が合格者数を大幅に絞っている。18年度入試で合格者数を前年より大幅に減らしたのは、法政大(▲3633人)、東洋大(▲3170人)立命館大(▲3147人)、関西学院大(▲2460人)、京都産業大(▲2346人)など。早稲田大も2年連続で、2千人前後絞っている。中でも、法政大と東洋大は17年の入学定員充足率が1.1倍を超えており、今年はより緻密に絞り込みをしたと思われる。両大学からは、合格者数調整への悩ましい現状が聞こえてきた。
法政大の廣瀬克哉副学長によると、16年度は競合する他校が大幅に合格者数を絞ってきたことで入学者数を読み切れず、1.17倍を大幅に超える定員超過となった。17年度はその反省から、大幅に合格者数を減らしたが、それでも複数の学部で基準値を超えてしまった。今年は他校もさらに絞ってくるとの予測のもと、昨年基準値を超えた学部は特に慎重に合格者数を調整したという。
「結果、いくつかの学部では定員を数%割った学部が出てしまった。絞り過ぎた部分もあるが、全学部でならすと1.0倍となり、適正な合格者を出せた。とはいえ、これは結果論であり、他校がどこまで絞ってくるかも読めない中で、定員充足率を1.0倍に調整するのは至難の業です。私大は、国立大学のように合格すれば入学することが前提の定員管理ではない。定員の適正化は否定しませんが、単年度、学部単位で年々基準値を下げるやり方は、いささか急すぎます。受験生にも影響が大きい」(廣瀬さん)
東洋大はどうか。今年は志願者数を約1万4千人以上増やすなかで、合格者数を3千人以上絞った。加藤建二入試部長は、定員厳格化以降「歩留まりが読めなくなった」と語る。
「合格上位層の歩留まりが、数%から20~30%に変化した例もある。合格ラインが大きく上昇すると、通常は歩留まりはダウンするものだが、逆に大幅にアップしている。早稲田大が毎年2千人も合格者を絞れば、MARCHの合格レベルは上がる。そうなると、わが校の併願にも大きく影響するので、今年のように大幅に絞らざるを得なくなる。結果、進学実績の高い高校からの入学者数が多くなっているが、わが校が第1志望の子は入学しづらくなっているかもしれない。『志願者数』と『入りたい大学』の不一致が起きてしまっているような気がする」
歩留まりが読めないため、各大学は合格者数を絞って様子をみたうえで、「追加合格」を出して調整を図るしかない。3月末に追加合格を出す大学もあり、受験生にとっては、ぎりぎりまで入学先が決まらないという事態にもなりかねない。
さらに追い打ちをかけそうなのが、すでに国会に提出されている「23区の私大定員抑制」法案だ。これは、東京23区内の大学新設や定員増を原則10年間認めず、新規の学部学科の設置も現状の定員内でしか認めないというもの。法案が通れば、20年度から規制が始まる。狙いは、東京一極集中の是正。東京への流出で地方の若者が減り、地域の活力が低下しているとして、地方大学の振興と雇用機会の創出を目的とする。