――無理解な病院もある一方で「グリーフケア」も広がっています。みんな赤ちゃんの死をどう受け止めているんでしょう。
亡くなった赤ちゃんとの思い出を作ることが、グリーフケアにつながることも多いんです。手形や足形をとったり写真やビデオを撮影するなどかたちを残すのはもちろん、亡くなった赤ちゃんの前にケーキを置いてハッピーバースデーを歌ったり、退院して一緒に海を見ながらおにぎりを食べたり、絵本を読み聞かせたり。抱っこして家のベランダから箱根駅伝を見た人など本当にさまざまですが、そういう思い出が心の支えとなり、しばらく経った後に前を向ける力になるのは、みんなに共通しているように感じました。
――赤ちゃんが生きていた証を残せるかどうかで、変わってくるんですね。
赤ちゃんを亡くして火葬まで一緒に過ごせる時間は限られています。だから、赤ちゃんを亡くしたご両親のそばにいる医療者には、「赤ちゃんのためにこんなことが出来ますよ」と選択肢を示してあげてもらえたらと思います。中には亡くなった赤ちゃんには会いたくないという人もいるので、決して押し付けじゃないかたちで。赤ちゃんの死の受け止め方は本当に多様で正解はありません。マニュアル通りの対応ではなく、一人一人に合ったグリーフケアが多くの病院で受けられるようになったらなと思います。
――死産や新生児死、流産を経験した人を社会はどう支えていくのか、当事者の体験をもとにした「傷つく言葉 支える言葉」の例が紹介されています。
大人のお葬式では「ご愁傷様で……」「なんと言ったらいいか……」だけで終わりにすることも多いですよね。それなのに赤ちゃんが亡くなったら気の利いたことを言おうとする人が多い。そうした悪気のない言葉に傷つくケースも多いようです。例えば「まだ若いんだから」「次の子を授かれるよ」というのは励ましの言葉なのですが、亡くなった赤ちゃんの存在を否定されたような思いがして落ち込むという人が何人もいました。周囲の人は無理に励ましたりせずに、話に耳を傾けて、寄り添ってあげることが大切だと感じました。