「可能性には期待していますが、すぐに大々的な結果が出るものではないとも認識しています。小さく生んで大きく育てていくのが方針です」

 これまでなかった新しい価値が認められるには、時間がかかると予想しているようだ。

 一方、新商品をプレミアムな位置づけにするメーカーが多いなかで、アサヒビールは違うスタンスをとった。4月17日に発売する「アサヒ グランマイルド」は全国一斉の発売で、オープン価格だが、価格は主力商品である「スーパードライ」と同じ程度になる見込みという。その狙いについて、マーケティング本部マーケティング第一部新商品開発室担当課長の岡村知明はこう説明する。

「定番のビールとして、日常的に飲んでもらいたいと考えています。そのために、販売地域も価格も通常ビールと同じにすることは最初からの方針でした」

 定義変更を機にアサヒが取り組んだのは、「これまでのビールの弱点の克服」だった。岡村は「ゆっくり楽しむシーンに、これまでのビールカテゴリー商品は弱かった。時間が経ってぬるくなってくると、アルコールや大麦の臭さが際立ってしまい、美味しさが長続きしない」とも感じていたという。

 ただ、そこを克服する研究は、以前から地道に続けていた。その結果、時間が経って際立ってくる大麦臭さを抑えるには、イネ科の多年草であるレモングラスが有効であることも突き止めていたという。ところが、これまでレモングラスはビールの副原料として使うことが許されていなかったため、実現できずにいた。今回の定義変更は、まさに弱点克服のチャンス到来となったわけだ。

 レモングラスを使うだけなら発泡酒でも可能だが、アルコール臭さのほうは抑えられない。それを克服する手立ても、すでに完成していたという。岡村が続ける。

「麦芽からアルコール臭さを抑える成分を抽出する技術があります。それには大量の麦芽を使用する必要があったので、発泡酒では無理でした。今回の定義変更で、二つの技術を一緒に使えるようになったわけです。そのため麦芽使用比率も緩和された50%以上ではなく、従来の基準の67%以上になっています」

暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ
次のページ