生保は保険金不払いの調査と同じ手法を使った。契約者全員に電話をかけ続け、つながらなければ自宅や避難所などをまわり、所在の確認に努めた。各社で情報を共有し、状況がわからなくても特例で保険金を支払うケースもあった。

 復興が進み、14年に入って海外進出が再び加速。数千億円から1兆円近い買収案件が次々とまとまった。国内市場だけに頼るのはリスクになったからだ。日本銀行のマイナス金利政策が収益に及ぼす悪影響が徐々に大きくなってきた。一時払い商品が販売停止に追い込まれ、生保全体では16年度、個人保険の新規契約が件数、金額ともに前年度を下回った。さらには、

「200年続いた保険のビジネスモデルが変わろうとしている」

 そう語るのは前出の栗山さん。いまは保険代理店、丸紅セーフネットの常勤監査役を務める。

 例に挙げるのは「P2P保険」と呼ばれる新しい仕組みだ。リスクを避けたい知り合いをネットで集め、お金を出し合ってためておく。だれかがそのリスクで損害を被れば、ためたお金から補償する。余れば全員で分配。

 相互会社や共済の原型にも似ている。ネットが普及したことで、より簡単に、より割安に実現できるようになった。すでにドイツでは自動車保険、米国では住宅保険などが活動する。

 仲間内で完結して保険会社を介さなければ、金融庁が付与する免許も形が変わる。一般に、保険料100円のうち、保険会社の事業経費と利益、代理店の手数料を足すと40円程度という。これも圧縮できそうだ。

「保険会社の経営は今後、さらに難しくなります」(栗山さん)

 超低金利によって、保険会社は着実に収益を削り取られている。その先にはネットの新しい保険が芽吹きつつある。標準生命表の改定も重なり、各社はコストを減らしながら新商品を投入して顧客の囲い込みを図る。顧客としてはチャンスだ。(呼称はすべて当時)

(編集部・江畠俊彦)

AERA 2018年4月9日号より抜粋

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