実は米朝緊迫の本質は、トランプと金正恩の子どもじみた言葉の中傷合戦ではなく、もっと構造的な問題に根があります。
1953年に朝鮮戦争が休戦になった頃、国際連合はまだできたばかりで連合軍の意味合いが強く、休戦相手は北朝鮮と中国でした。だが五大国として国連常任理事国になった中国と国連が、対立するわけがないんです。それなのに、国連の帽子をかぶった「朝鮮国連軍」という名の米軍が、北朝鮮と対峙している非常におかしな状況が続いている。国連としては帽子を返してくれとも言えず、何をするにしても「アメリカの意思で決めてくれ」「国連の機関をわずらわせないでくれよ」というスタンス。日本は、日米地位協定の他に「朝鮮国連軍地位協定」を持ち、横田基地が後方支援基地になっています。
要するに朝鮮半島の和平とは、朝鮮国連軍とは何ぞやと真剣に考えない限り、ブレークスルーになりません。韓国と北朝鮮なら開戦すればお互いに傷つくから、そのリアリティーを視覚化させ、説得することで和平に至る。韓国では、日本みたいに米朝開戦とか全く騒いでいませんよ。「開戦したら終わり」と誰もが知っているので、メディアも冷静で絶対煽らない。ところが、アメリカ自体は何千キロも離れているため、通常兵器では傷つかない。開戦の当事者が向き合っていないので、「和平」になるはずがないんです。
結局、北朝鮮が核開発を進めている理由は、構造的な朝鮮国連軍があるからです。相手が韓国ならば核兵器も大陸間弾道弾も必要ない。被害の当事者じゃないアメリカが、休戦の当事者でいる限り、北朝鮮の核武装化は絶対止められないのです。
PACCに参加して、米軍の中でも一番現実的な陸で戦う人たちは、「失敗の経験値を教訓に戦争に対する知性を保っているな」という確認はできた。ただ、絶対戦争が起こらない保証にはなりません。特に「なめられるな」というネトウヨみたいな既得権益層の支持で成り立っているトランプ政権のような場合、政権が不安定になるほどに、支持層に煽られ、偶発的なことが起こりやすくなるので。
国家がある限り、戦争のリスクはついて回る。国家そのものは「恐怖」をベースにした主権意識があって成り立つものであり、恐怖があるから家に鍵もかけるし、恐怖を煽り立てるから戦意が高まる。だからこそ戦争になる前に、いろんな方法を模索するんだけど、今は非常に条件が悪いですよね。日本の安倍政権もアメリカのトランプ政権も極端な支持層をバックボーンにした右派で、北朝鮮は独裁国家。唯一まともに見えるのは、韓国の文在寅政権だけです。