ここ数年の参加者は60~70人ほど。参加する年齢層は20代から70代までと幅広いが、30代から40代が比較的多い(男性向けにおこなわれる峰中行は150~160人の参加者)。 

「現在は初度位と呼ばれる初参加の方か、何年も続けているベテランの方の割合が高いです」(吉住さん)

 フリーライターであり、会社も経営している大槻レナさん(44)は、羽黒山伏・星野文紘さんの体験修行ののち、出羽三山神社の神子修行にも参加するようになった。

「とくに悩みもなく、軽い気持ちで参加したのですが、日頃の運動不足がたたり、修行は楽なものではありませんでした。星野先達は、原則、必要以上の言葉を用いない無言行を貫いています。国籍、性別、宗派も問いません。そこに信頼感を持ちました。『感じなさい。そこから考えなさい』と、体験の重要性を説く星野先達からは、人生哲学を教えてもらったと思います」

 大槻さんは「帰京してから、いつもの街が違う景色に見えるようになった」そうだ。

「それまで冷たいコンクリートの塊でしかなかった街にも、人々の労苦の積み重ねや、思いの温かみを感じるようになったんです。山伏が祈る対象は神仏だけでなく大自然。山伏のありかたを知ることで、暮らしている街に森はなくとも、生きる自分を包みこむすべてが感謝の祈りの対象であることに気づかされたのかもしれません」(大槻さん)

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