以前は人工肛門になるケースが多かった直腸のがんも、肛門を温存できるケースが増えた。
「剥がす作業を骨盤の奥のほうまで進めていかなければならないし、周囲にいろんな臓器があるので難しい手術です。位置が肛門にとても近い場合はどうしても取らざるを得ませんが、そうでなければ括約筋のぎりぎりのところまで腸間膜を切り、肛門を温存しながら、きちんとがんを取ることができます」
こういった領域のがんは、技術力のある病院とそうでない病院とで術後の生存期間に違いが出る。上野医師はこういった症例を「腕の見せどころでもあり、興味深い」という。
切った腸をつなぐ吻合(ふんごう)においても、病院によって成功率に差が生じる。
「特に直腸の吻合は慎重さが求められます。つなぐ前段階の準備が大切で、そこを適当にしてしまうと、やはり漏れる率が高くなります。術後の縫合不全の発生率は全国平均で9.7%ですが、当院では1.3%。この数字はやはり手術数が多い病院ほど低くなります」
最先端の治療を可能にするのは外科における技術力だけではない。抗がん剤治療や放射線治療を担う他部門の力も大きい。