膵臓がんは、早期発見が難しく、予後が悪いという声が極めて多かった。「見つかったときには治療が大きく制限されていて、絶望感が強い」(産婦人科・30代・男性)と、心的ダメージへの言及も見られた。肺がんでは呼吸困難、食道がんや咽頭がん・喉頭がんには、食事や発声ができなくなる恐れなど、ADLやQOLのリスクを指摘する声が多い。
3期・4期のがんと診断された場合に選択する治療法は、冒頭で言及したように、すべてのがんで「緩和ケア」が最も多く挙がっている。
「4期は、多臓器転移のある状態です。医師ならば、4期のがんの5年生存率の低さも認識している。積極的な治療をするより、痛みなど症状を和らげてQOLを優先したい、ということでしょう。知識があるぶん、一般人よりあきらめが早いのかもしれません」(石見医師)
帝京大学病院肝胆膵(かんたんすい)外科の佐野圭二医師は言う。
「確かに膵臓がんは見つかりづらく、進行も速い。ただし、医療の進歩は目覚ましい。医師も自分の専門外のがん種の最新情報までは把握しづらいもの。治療効果を期待できる薬が増えてきたので、私なら抗がん剤は試すと思います」
抗がん剤というと、副作用が激しく、QOLが下がるイメージがつきまとうが……。
「副作用を過度に恐れる人もいますが、化学療法は始めたらやめられないものではない。副作用の程度も人によりまちまちなので、一度試してみる価値はあると思います」(佐野医師)
順天堂大学病院呼吸器外科の鈴木健司医師は言う。
「治療後の生存率のデータを見ると、4期の肺がんはほぼゼロに近いので、『治療する意義がない』と考える医師が多いのでしょう。また、抗がん剤を投与すれば余命が半年延びると論文に出ても、その状態がほぼ寝たきりかどうかなど、延命の内容も厳しく見ているのでは」
肺がんも、昨今、新しい抗がん剤が出てきて、事情が変わりつつあるという。一方で、患者側の心理をこう分析する。