


パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の街、アルザリアを訪ねた。本来ならエルサレムまで車で10分。それがいまは1時間以上かかる。分離壁を迂回しなければならないからだ。
ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地があるエルサレムは1947年、国際連合のパレスチナ分割決議において国連の国際管理都市とされた。だが4度の中東戦争を経て、イスラエルはパレスチナ自治区を実効支配。「首都はエルサレム」と宣言し、ユダヤ人入植地や分離壁を建設して国際社会の批判を浴びてきた。米トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都だとしたことは、国際社会と完全に意を異にしている。
アルザリアで菓子店を営むアユマンさんは、
「以前はエルサレムからお客さまが来てくれましたが、街を人が通らなくなり収入は激減して生活は苦しくなりました」
と話す。エルサレムへの幹線道路には検問所が設置され、パレスチナ人は通行許可証がないと通ることはできない。許可証は多くの場合、職場が発行してくれるのだが、パレスチナ人が人口過密状態の東エルサレムで職を見つけることは困難だ。
分離壁に投石したり放火したりして、時折イスラエル兵と衝突しているのは、職を失い日々の時間を持て余している10代、20代の若者だと言われているが、アルザリアの公立学校に通うアラーさん(13)はこう話す。
「投石しても逮捕されるだけです。私にできることは一生懸命勉強すること。教育がこの状況を変えると信じているんです」
(フォトグラファー・清水匡)
※AERA 2017年1月29日号