なぜ開発しようと思ったのか。古賀会長は「当時、河川の護岸に使うブロックは、生物や微生物が棲みつきやすい形状なのが特徴でした。菌類が棲みつくのを受け身で待つのでなく、最初から浄化性能が高い菌をブロックに封入したらどうか、と思いついたんです」と話す。

 ちょうど福岡県も「バイオバレープロジェクト」と銘打ってバイオ関連産業の育成に注力。菌を多種保管する県工業技術センター生物食品研究所に相談したところ、菌の供給で協力も得られることに。開発期間は5年間。00年にやっと製造に成功し、06年には米国で、08年には日本で特許も取得した。

 海外からも熱いまなざしが向けられている。ブロックには様々な形状があり、数百個単位で河川に敷設する場合もあれば、手のひらサイズで家庭用の水槽に使えるものもある。菌が浄化できる条件は水温が10度以上で、それ以下の地域では効果は出ないが、すでに南国では活躍中。例えば02年のマレーシアのマラッカ川に敷設する国家プロジェクトや、06年にはインド環境省によるプロジェクトなど。

「施工が簡易で、ランニングコストも安い。それに加えて、納豆菌という言葉自体が、日本文化の象徴のような技術ととらえられ、海外から注目されたのかもしれません」(古賀会長)

 朝の定番から日本のお家芸として、いまや納豆菌は世界に羽ばたきつつある。(編集部・高橋有紀)

AERA 2018年1月29日号より抜粋