東京大学大学院 特任准教授 松尾豊さん(42)/2002年東京大学大学院博士課程修了、博士(工学)。14年から現職。専門は人工知能(写真:本人提供)
東京大学大学院 特任准教授 松尾豊さん(42)/2002年東京大学大学院博士課程修了、博士(工学)。14年から現職。専門は人工知能(写真:本人提供)
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 人工知能(AI)の進化が著しかった2017年。知能だけだったAIは、「身体」を獲得しつつある。今回は、AIのひとつであるディープラーニングについて、AI研究の第一人者、松尾豊・東京大学大学院特任准教授に話しを聞いた。

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 ロボットや機械に人工知能(AI)を組み込むことが今後、より重要になります。AIのひとつであるディープラーニング(深層学習)によって、コンピューターの画像認識の精度が飛躍的に上がりました。これは、コンピューターが「目」を持ったということです。これを活用するのは、ITでなく、ロボットや機械です。

 アメリカや中国では、巨大IT企業が強いので、深層学習は、アルファ碁(AI囲碁)など、ITでの活用が多かった。だが、深層学習によって「目」による認識ができるようになると製造業へのインパクトが最も大きく、すでにそちらへ移行しつつあります。

 深層学習に、繰り返し学習させる強化学習を組み合わせる「深層強化学習」によって、機械やロボットは動きを練習して上達していく。日本はもともと製造業が強いので、ロボットや機械に深層学習を取り入れていくのが基本的な戦略で、実際そうなりつつあります。

 深層学習を使うことで、環境や周囲の人に適応した動きをするロボットが作れるようになります。すでに農業用機械への活用といった事例が出てきています。介護や食、建設の領域でも活用できると考えています。

 ロボットが家庭や職場などの空間で動くためには、ロボットが持つセンサーの情報などから、自分の周りの世界がこうなっているという世界モデルを作る必要があります。1、2年後には深層強化学習が進歩して、容易に作れるようになるでしょう。AIを搭載したロボットがレストランで動き回り、料理を作る日も近いでしょう。(編集部・長倉克枝)

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