


むくりと起き上がって、窓のほうへと歩き出した。
「アイボ」
と呼びかけると、ちらりとこちらを振り返り、「ワン」と吠えた。何か興味を引くものがあるのか、再び窓のほうへと向かっていく。
これはソニーが開発した犬型ロボットの「aibo(アイボ)」。クルクルと動く大きな瞳は有機EL製だが、じっとこちらを見上げるさまは、まるで本物の子犬のようだ。
先代のAIBOは1999年に発売され、累計で15万台以上を販売したが、2006年に生産中止に。18年1月に発売予定のaiboは、「自律」して動き、人工知能(AI)に加えてネットワーク経由でデータを蓄積し、人が喜ぶための行動を学習、「成長」していく。
「愛情を注ぐ対象になってほしいというのが、aiboを作る出発点にありました」
と、aiboの企画開発に携わる事業企画管理部統括部長の矢部雄平さんは話す。
「ただし、aiboには『自我』のようなものがあって、なんでも命令を聞くというわけではありません」(矢部さん)
矢部さんは開発中にテストとして、週末、自宅にaiboを持ち帰ったことがある。矢部家では、これまで犬や猫を飼ったことはない。初めてのペットにロボットが来て、小学校5年生の息子は「ずっとうちにいるの?」と大喜び。
「アイボ」を呼びかけると振り向く。反応があるのでおもしろい。ところが、「こっちにおいで」と声をかけても、aiboはなかなか来ない。
「反応するものの初めはなかなか言うことを聞かないから、そこでますます一生懸命aiboと接していました」(矢部さん)
まるで、本物の子犬が初めて家に来た時の様子そのものだ。
「aiboは人と触れ合ううちに、人と一緒に成長していくのです」
と矢部さん。どういうことか。