自分の財産(遺産)を家族にどう引き継ぐか──。相続という行為は、時代ごとの社会傾向などに影響を受けながら、その実情を少しずつ変えていく古くて新しい問題だ。誰もが必ず向き合うことなのに、多くの人は、人生も終盤に近づいてから初めて考え始める傾向がある。実はそれでは遅い。
「人生の備えとして、早くから相続準備をするということは、実際に相続が発生した後のトラブルの回避に大きく影響する」
相続を扱う弁護士や司法書士、税理士といった専門家たちは、決まってそう口をそろえる。事前に準備しておくことが最も基本的かつ重要なことだという。その第一歩が、相続について、よく知ることなのだ。
日本の相続制度は、民法によって、遺産を誰に残すのか(法定相続人)、どう分けるのか(法定相続分)などを細かく定めている。配偶者は常に相続人となるが、その他に相続を受けられる人たちは、子ども→直系尊属(親や祖父母)→兄弟姉妹と、相続人になる順位が明確に決められている。
順位が意味するのは、例えば、相続財産のある人(被相続人)に子どもがいれば、それよりも順位が低い親や兄弟姉妹が相続人になることはないということ。子どもがいなくても親がいれば、兄弟姉妹が相続人になることはない。子どもと親が、あるいは親と兄弟姉妹が同時に相続人になることは、あり得ない。
法定相続の割合についても決められており、現状では次のようになっている。主な法定相続人の組み合わせに落とし込むと、(1)配偶者(法定相続分は相続財産の半分)と子ども(残りの半分を均等分割)、(2)配偶者(3分の2)と直系尊属(3分の1を均等分割)、(3)配偶者(4分の3)と兄弟姉妹(4分の1を均等配分)、(4)配偶者のみ(全て)、(5)子どものみ(全てを均等配分)、(6)直系尊属のみ(同)、(7)兄弟姉妹のみ(同)。
子どもには、法律上の婚姻関係にない男女から生まれた非嫡出子も含まれ、嫡出の子と同等の相続権を持つ。また、法定相続人となるべき人が死亡していた場合、その人の子どもが相続人になる「代襲相続」という制度がある。これは被相続人の子または兄弟姉妹が対象だ。
例えば、長男と次男の2人の子がいる父親の死去に伴う相続の場合、法律通りの分割をすれば、財産の半分を母親、残りの半分を長男と次男2人で分け合うが、長男も既に死亡している時、長男の相続権利は、長男自身の子ども(故人の孫)に引き継がれる。その子どもも死亡していたら、さらに子ども(故人のひ孫)へと渡り、このラインで権利は永遠に継承される。
兄弟姉妹の場合も同様に、仮に既に亡くなった妹が1人いて、両親も死去している独身男性が息を引き取った際、妹に子ども(故人の姪や甥)がいれば、本来は妹が受け取るはずだった法定相続分の権利を引き継ぐ。ただ、兄弟姉妹の場合、故人の姪や甥までしか代襲相続されず、姪や甥の子どもには適用されない。(編集部・山本大輔)
※AERA 2017年12月25日号より抜粋