大阪学院と大阪府でしのぎを削る近畿大学附属高校も大森健史さん(43)が監督になってから、過去6年で8回全国大会出場。15年度のウインターカップではベスト8に進出した。

 強豪校では異色の「日曜日完全オフ」を敷いている。

「僕自身、疲労とストレスで仕事や指導の精度が落ちていると感じていた。自分が疲れているんだから、生徒もそうだろう、と」(大森さん)

 周囲から「ふざけるな」「弱くなるぞ」と非難囂々(ごうごう)だったが、大森さんはさらに年休制度までつくった。理由を添えて3日前までに申請すれば、年に10日間練習を休める。大森さんは言う。

「休む権利があるという意識を植え付けたかった。主体的に動ける人間でないと選手としても伸びませんから」

 選手の立場でこれを実感したのが、冒頭の酒巻君だ。問題の教諭がベンチに入れなかった3カ月弱の間に、全国高校総体予選を自分たちで戦った。決勝は延長に突入、大接戦を制した。

「なぜ勝てたか? それはみんなが自分の意思でプレーしたからです」

 この3カ月間を仲間と過ごせたことで得た学びは大きいと感じている。

「将来は、たくさん勉強して、選手を尊重できるいい指導者になりたい」

 と酒巻君はほおを緩める。

 古い手法を取り続ければ、コーチたちは職を追われるリスクを抱え続ける。暴力・暴言を捨て去ることは、コーチ自身が救われることにもなるのだ。(ライター・島沢優子)

AERA 2017年12月25日号