たまのの駅に近い住宅街に、認知症の父親の介護をしながら暮らす長男夫婦がいた。長男には姉がいるが、母親の介護に全く無関心だった父親に嫌気がさし、姉と父親は絶縁状態となった。結局、姉が母親の介護をしたが、数年前に他界。実業家だった母親は多額の遺産を残したが、その半分を当然のように相続した父親に姉は怒り、とうとう家を出ていった。

 父親が認知症になると、今度は姉が知らんぷり。長男は父親と同居し、主に長男の妻が父親を介護。すると姉は「そんな父親の介護なんかするな」と言って、長男夫婦まで敵視するようになった。そんな姉に怒りを覚えた長男の妻が、長男をせかして、父親の財産の多くが長男に来るような内容の遺言を、父親に書かせようとした。でも、認知症で判断能力がない父親に遺言を書くことはできなかった。

 そして父親が亡くなった。遺言がないから、姉は当然、法に従って、財産の半分の相続を要求。さらに認知症になった後の父親の財産管理を長男が任されていたことを取り上げて、長男が勝手に父親の預金を自分の口座に移し、横取りしていたと主張した。

 困った長男が弁護士に相談すると、こう言われた。

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