対話型鑑賞では、作品についての「知識」は重視されない。自分の目に見えるものを語り、他者の意見を参考に観察を深めていく(写真:京都造形芸術大学提供)
対話型鑑賞では、作品についての「知識」は重視されない。自分の目に見えるものを語り、他者の意見を参考に観察を深めていく(写真:京都造形芸術大学提供)

 時代の転換期を迎え、企業が立ちすくんでいる。知識や経験はすぐに古び、 上司の武勇伝も学歴も全く役に立たない。正解なき時代。突破口はあるのか。

 ビジネススキル向上のために美術鑑賞、と聞いて首を傾げる人は多いかもしれない。しかし、すでにアメリカでは、情報収集能力、思考力、判断力、伝達力、質問力を向上させて仕事に役立てるために美術館を訪れるビジネスパーソンが増えている。

「美術作品の鑑賞は趣味や娯楽というイメージが日本では強くて、ビジネススキルにつながると言っても信じてもらえません。体験すれば、ほとんどの人に納得してもらえますけどね」

 と言って、京都造形芸術大学の准教授でアートプロデュース学科長の伊達隆洋は苦笑いを浮かべた。彼が所属している同大学のアート・コミュニケーション研究センターでは、美術作品の鑑賞を介してビジネスにも役立つ能力を向上させる「対話型鑑賞」の研修を企業向けにも行っている。

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