と、同研究所所長の山川宏さんは話す。脳は、思考や言語を担う大脳新皮質、運動の調整や認知、動機づけなどを担う大脳基底核、情動を担う扁桃体、記憶を保持する海馬といったさまざまな領域に分かれている。

 山川さんたちは、こうしたパーツごとのAIをネットワークでつないで脳全体を再現しようとしている。

 これまでにネズミの大脳新皮質、大脳基底核、それに海馬の働きを模したAIをそれぞれつくり、コンピューターの中で動かしてみた。まだ脳全体の働きには遠いものの、

「200~300くらいのパーツをつくってつなぐことで、人の脳全体を再現できると考えています」(山川さん)

 人の感情や情動の仕組みなど、脳の機能はまだわかっていないことも多い。とはいえ実際にAIをつくりながらシミュレーションで動かしてみることで、理解が進み完成への近道にもなると山川さんは考えている。

 では、「心」はどうだろう。AIで再現できるのなら、人の心をコンピューターに移してしまう「マインドアップロード」も可能になるのだろうか? 14年に公開されたSF映画「トランセンデンス」は、死んだ科学者の意識をコンピューターにアップロードして肉体の死後も研究を続けさせる物語だ。脳の働きを読み取る技術の開発は進むものの、

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