決済や海外送金、資金調達といった、仮想通貨を使ったビジネスが次々と生まれつつある。飲食店や家電量販店など、ビットコインを使える店舗も増えてきた。企業などが独自の仮想通貨を発行し資金を集める「ICO」も注目の的だ。
●分裂後も取引量増える
仮想通貨取引所を運営するコインチェック(東京都渋谷区)取締役COOの大塚雄介さんは、
「事業拡大のスピードはインターネット時代になりその前の3倍になったが、仮想通貨時代になってさらに3倍になったような感覚だ」
と、仮想通貨ビジネスのスピードの速さを感じている。
ただし、現状の仮想通貨ビジネスは、円やドルなどと仮想通貨を交換するためのオンライン上にある取引所での売買が中心だ。冒頭の男性のように、投機的に仮想通貨を売買する人が多くを占める。
コインチェックでは「仮想通貨購入は投資のためという人がだいたい7割くらい」(大塚さん)という。
一方、仮想通貨取引所「ビットポイントジャパン」を運営するリミックスポイント(東京都目黒区)代表取締役社長の小田玄紀さんはこう話す。
「ビットポイントジャパンでの取引の99%は投機目的です。口座開設者は男性が9割で、30~50歳代が多い。もともとFXなどをやっていた人が多いですが、投資経験が全くない人も3割くらいいます。ビットコインの分裂以降、新規口座開設が急増し、半年前と比べて3倍ほどになっています」
今年8月、ビットコインの分裂騒動が世界を揺るがせた。取引量拡大に伴う運用方法の変更をめぐって関係者が対立し、ビットコインから分裂して「ビットコインキャッシュ」が誕生したのだ。結果的には分裂後も取引量は増え、ともに価格は上がり続けた。
●価格変動のリスクあり
だが仮想通貨の価格の変動は激しい。1年前に1BTC=6万円台だったビットコイン価格は、8月までは急激に上がり続けていたが、9月初めには55万円前後に高騰したあと、乱高下している。
9月中旬、都内のビジネス街。ある会社員男性は同僚にこう愚痴をこぼした。
「ビットコインを20万円購入したら、すでに16万円になったよ」
中国でのICO禁止や仮想通貨取引所閉鎖などの報道を受けて価格は低迷、さらに12日には米銀JPモルガン・チェースのCEOが「ビットコインは詐欺」と発言したとの報道を受け、一時32万円台まで暴落したのだ。
こうした価格変動のリスクはあるが前出の小田さんは、
「ビットコインをはじめとする仮想通貨の価格はまだ上がっていく。ビットコインは年末に向けて60万円くらいまでは上がるのではないか」
と考えている。