世の中に浸透する一方で、「非科学的」と眉をひそめる人も多い「占い」。しかし、個人の選択肢が増えすぎ、経験則が必ずしも通用しない現在、「信じる」「信じない」ではない「占い」とのつきあい方があるという――。AERA10月2日号では、「占い」を大特集。金融やマーケティング、カウンセリングなどの世界で「占い」がどう活かされているかを探り、現代社会における「占い」のあり方を多角的に取材した。
沖縄には古来、霊的能力を持つとされる「ユタ」と呼ばれる人たちがいる。その内実は宗教か、呪術か、それともメンタルケアなのか──。
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「これまで20人ぐらいのユタにかかりましたが、私の感覚では当たる確率は3割か4割ではないでしょうか」
学校法人「尚学学園」(那覇市)の理事長室。名城政次郎理事長(86)は射抜くような視線でこう打ち明けた。
尚学学園の沖縄尚学高校といえば1999年に沖縄県勢初の選抜高校野球大会優勝を成し遂げた有名私立。沖縄有数の進学校でもある。1代で学園の名声を築いた辣腕理事長の経営判断にユタが影響してきたのか──。
「なるほど、来たな」
「ユタに振り回されていたら学校経営なんてできませんよ」
名城理事長はあっさりと否定した。ユタの判示はあくまで事業活動や健康管理の「参考材料」にすぎない。そう強調しながらも、ポツリとこぼした。
「魔物の世界があるんじゃないかと思わせられることがあるんですよ……そういえば、不思議なことがありました」
理事長はソファから身を乗り出し、淡々と語り始めた。
英語塾や予備校を経営していた名城理事長は50歳の頃、激しい目の痛みに襲われた。眼科治療も芳しくなくユタに相談した夜、こんな夢を見たという。
修行僧が玄関に立ち、帳簿を積み重ねた。一冊は何も書かれていない。ユタはこの夢を「教育の帳簿が降りている」と解析。白紙の帳簿は沖縄の教育界を牽引する理事長自身がこれから書き込む一冊である、と説いた。
2年後。「沖縄高校を助けてください」という話が持ち込まれたとき、名城理事長は「なるほど、来たな。このことだったのか」と受け止めた。