物語を雄弁に語るのは映像だけではない。感情がたっぷりこもった音楽もクストリッツァ作品ならでは。使われる「ウンザウンザ」は、伝統音楽やジャズ、ラテン、ハードロックなどを融合させたものだ。
「まだあまり掘り下げられていない、掘り下げる価値のある音楽。もっと世界に知られてもいい音楽だからこそ、大きな強みだと思うんだ」
●突き動かされなければ
ミュージシャンでもあるクストリッツァは、音楽は映画にとても近い構造を持つと話す。ステージで演奏していると、短編をたくさんつづっている感覚に陥ることがあるという。
映画づくりで大切なことは何かという問いには、
「いいアイデアを見つけること」
と即座に答えた。
「強いアイデアが良質な映画につながる。最初に自分が抱いたアイデアによって突き動かされなければ、いい映画はできない。特にいまは誰でも映画を撮ることができる時代。若い監督たちには、そこが一番の難関です」
もっとも、クストリッツァ自身にとっての苦労は別らしい。
「インスピレーションが次々に湧いてくる。そこからやりたいことを選ぶのが大変なんです」
(フリーランス記者・坂口さゆり)
※AERA 2017年10月2日号
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