同社の営業本部長、本田啓夫(たかお)さん(29)によれば、同社への遺品整理の依頼はここ1、2年で増え、月400件ほど。実家の整理の際、片づけた後でも数万円単位の「お宝」は普通に出てくるという。評価額の高いものは家電製品、バッグなどのブランド品、骨董品、昔のおもちゃやゲームソフト……。畳やカーペットの下などから、現金が出てくることも珍しくない。今まで本田さんが片づけの際に「発見」した現金の最高額は、なんと300万円。カーペットの下などから見つかった。

「実家には価値のあるものが眠っていると思います」(本田さん)

 静岡県に住む40代の主婦は、実家に眠るお宝をフリーマーケットアプリ「メルカリ」を使い、片づけを進めている。

 両親が暮らす実家の物置は、20年ほど前に亡くなった祖母と先日亡くなった祖父が使っていた家財道具や小物類で埋まっていた。2年ほど前、これをどうすればいいかと母親から相談を受けた時に利用しようと思ったのが、始めて間もないメルカリだった。

●メルカリで遺品処分

 食器、アクセサリー、ネクタイ、ペーパーラック、絞りの浴衣、いす、ライティングデスク……。女性は一つ一つ写真に撮り、サイズや商品の状態などを打ち込んでサイトに出品。

 使い込まれた感じのアンティーク調の品は若い世代に人気だ。最高額は昭和時代のライティングデスクで4万円。リピーターも多く、これまで計100点近く出品し20万円近い売り上げがあった。そのお金は、近所の野良の避妊手術代などに使っているという女性は話す。

「祖父や祖母が使っていたものを処分することに母は抵抗があったので、本当に必要と思う人に買ってもらえ大切に生かされ、母も喜んでいます」

 多死社会ニッポン。実家や相続した家には、眠れるお宝が、きっとある。

(編集部・野村昌二)

AERA 2017年9月25日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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