遺品の仕分けをする「遺品整理プログレス」の本田啓夫さん。最近は「孤独死」の現場に遭遇することも多くなったという(撮影/写真部・片山菜緒子)
遺品の仕分けをする「遺品整理プログレス」の本田啓夫さん。最近は「孤独死」の現場に遭遇することも多くなったという(撮影/写真部・片山菜緒子)
東京都内に住む女性の夫の実家から出てきた品々。引き取られた後、リサイクルに回される品も多い(撮影/写真部・片山菜緒子)
東京都内に住む女性の夫の実家から出てきた品々。引き取られた後、リサイクルに回される品も多い(撮影/写真部・片山菜緒子)

「断捨離」と言われても、なかなかモノが捨てられない。だが、インターネットのおかげで、実家の片づけや引っ越しで出るガラクタにも値がつく時代に。訪日する中国人が、家の片隅に置かれた中国骨董に高値をつけ、メルカリでどんどん遺品整理もできる。タンスの中は、宝の山だ。AERA 2017年9月25日号では「お宝流出時代」を大特集。

 年間131万人が亡くなる多死社会ニッポン。遺品整理、相続、空き家問題と直面する家族の負担は大きいが、見方を変えればそこは「宝の山」だ。

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 がんを告知された、東京都内に住む60代の男性。昨年、長年集めてきたウルトラマンやゴジラのソフトビニール製フィギュア(ソフビ)300体近くを、古物商「まんだらけ」(東京都中野区)で査定してもらった。見積額は、トータルで約500万円。見積書を妻に見せると、妻は喜び、ここまでやってくれた夫に感謝した。

「家族に対するメッセージとなり、私が死んでも妻は捨てずにちゃんと管理してくれると思います」

 これは「生前見積」と呼ばれる、まんだらけが昨年3月に始めたサービスだ。同社のHPから簡単に申し込みができ、査定は無料。1点からでも見積もりは可能だ。

 発案した、同社副社長の辻中雄二郎さん(46)はこう話す。

「僕たちの周りで50代、60代のコレクターが亡くなるケースが増えてきた。死んだら大切に集めたコレクションがどうなるか。ゴミとして捨てられるのが一番つらい。事前に見積もることで対策がとれるのではないかと考えました」

●「生前見積」で家族に理解

 死期を悟り、生前にコレクションの行く末を考える人が対象だ。中高年の男性を中心に月8、9件の依頼があり、トータルで1千万円を超える見積もりもあった。

 見積もった後で同社に買い取りを依頼しなければいけないという決まりはないが、見積もり後、そのまま同社に託して売るケースが多いという。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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