小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。オーストラリア行きを決断した顛末を語った新刊『これからの家族の話をしよう~わたしの場合』(海竜社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。オーストラリア行きを決断した顛末を語った新刊『これからの家族の話をしよう~わたしの場合』(海竜社)が発売中
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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「フリー・ザ・ニプル」乳首を解放せよ! 男性が乳首を露出しても問題ないのに、なぜ女性はダメなの? 女性の乳首も男性の乳首と同じように扱われるべき!……これは半裸で暮らしたい女性たちの運動ではありません。乳首は不平等のシンボルなのです。「フリー・ザ・ニプル」は、アメリカ政府に対して女性差別撤廃条約の批准を求め、男女平等を広く世界に訴える運動。マドンナやマイリー・サイラスも賛同しています。

 私個人は乳首の解放を必要としていませんが、男女平等にはもちろん関心があります。日本は女性差別撤廃条約を批准しているものの、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数は144カ国中111位。メディアでの女性の描かれ方もステレオタイプだったり、過剰に性的だったり。

 昨年10月、国連が映画「ワンダーウーマン」主演のガル・ガドットさんを招き、ワンダーウーマンを女性の権利向上のための名誉大使に任命したところ、一部の職員が「主人公の容姿は過剰に性的」だとして反対の署名を募り、結局名誉大使は解任されました。

 映画版の物語は、扇情的でも外見重視でもなく、胸やお尻を強調した撮り方でもありませんでした。肉感的な体形を強調した原作のキャラクターよりも戦士であることが強く打ち出された映画版。描き方、見方次第で、女性の身体は過剰に性的にも、英雄のようにもなります。私たちの内面がそうであるように。女性の身体にはときに偏狭な眼差しが向けられることがあります。

 私の乳房はかつて、身体に生じた不慣れな変化でした。やがて性的なコミュニケーションツールになり、出産後に乳房は子どもの食糧生産工場に、乳首は食器になりました。乳がん検診のときはザ・人体という感覚。

 身体にはいくつもの文脈があります。なんであれ、一つの文脈のみで判断されるのはごめんです。誰の身体も、無二で多様な存在なのです。

AERA 2017年9月25日号