「坊主まるもうけ」。豊かなイメージもある仏教界だが、格差社会はお坊さんの世界も覆う。過疎化で集落や檀家が細り、地方のお寺が危機に瀕している。
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一昨年のベストセラー『京都ぎらい』(朝日新書)には、祇園など花街遊びに興じる京都の“金満坊主”が描かれる。著者の国際日本文化研究センター教授・井上章一さんはこう言う。
「京都には『肉山(にくざん)』(潤沢に資金のあるお寺)、『骨山(こつざん)』(困窮している寺)という呼び名があります。お寺の事情は京都でもさまざまなのです」
困窮する寺のひとつを訪ねた。山梨県早川町は人口1116人、世帯数632戸(7月1日現在)。甲府駅から車で1時間強で、古屋と呼ばれる集落にたどり着いた。家屋は15軒ほどあるが、住民が住むのは4軒。その一つが日蓮宗・浄蓮寺だ。
浄蓮寺は戦国武将・武田信玄が建てたとされる。金井海淨(かいじょう)住職(65)は、30代目。東京の大学を卒業し、僧侶としての修行を積んだ。先代住職だった父が他界した後、1991年にひとり、居を移した。
「30年前は30軒ほどあった檀家も、いまは4軒。寺の年間収入は10万円以下です」(金井さん)
●雨漏りすら直せない
金井さんは、平日は近くの旅館の清掃従業員として働いている。8時に家を出て、帰るのは午後3時。月給は約6万円なので、家屋の雨漏りを直すこともままならない。
「『これからどうするの』とよく聞かれますが、現状を維持していくだけです」(同)
テレビや雑誌の取材に応じているため、「報酬をもらっているのでは」と誤解されることもあるが、「これが現実。ひとりでも多くの人に、この現状を知ってもらいたい」。
同じ早川町の曹洞宗寺院の住職(53)は会社員を兼業する。14年前に先代住職の父親が亡くなり、「自分の生まれ育った寺を守りたい」と跡を継いだ。檀家は現在34軒だが、「兼業なら続けていける」と考えている。