日本海にまた北のミサイルが着弾した。覇権国家アメリカでは“CNN”にラリアットする男が大統領だ。いつの世もリスクはつきものだが、いよいよニッポンもきな臭くなってきた。そんな時代に我が家の家計を、資産をどう守るか。苦難を乗り越え今に至る、隣の中国の「不動産投資」やインドの「金投資」から知恵をいざ、学ばん。AERA 2017年7月17日号では「中国とインドのお金を守る方法」を大特集。
ジャッキーやサモ・ハン・キンポーだけが香港じゃない。いまや世界の金融センター。進出した日系銀行が口座と投資信託で新たな取り組みを始めている。
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資産防衛といえば、必ず登場するのが「海外口座」の開設だ。スイスなどのプライベートバンク、もしくは香港やシンガポールのユニバーサルバンクへの口座開設がいかにも、というところだが、資産の“海外逃避”先としても知られている。
だが日本人にとって、海外口座による資産運用には二つの大きな壁が立ちはだかる。ひとつは言葉の壁だ。外国人の口座開設を積極的に受け入れている英HSBCやCitiといった大手銀行は、一時は日本語によるサービスも実施したが、英語対応が原則。現在は開設手続きから取引まですべてが英語で、語学が苦手だとハードルが高い。
もう一つの壁は「最低預入金額」の高さだ。日本では聞き慣れないが、この最低金額を下回ると月額数千円の口座維持管理手数料がかかる銀行が多い。しかもその最低預入金額たるや10万米ドル(約1100万円)などで、プライベートバンクだと最低10億円なんて銀行もある。これでは富裕層でもなければ、海外銀行での資産運用は夢のまた夢。要は、語学に自信のある金持ちでないと海外口座を活用できなかったわけだ。
●「顧客不在」の国内投信
一方で海外口座のメリットは少なくない。例えば、(1)分散投資ができる(2)有事(戦争、財政破綻、超インフレ)の際の危機回避になる(3)日本にはない商品に投資できる──などが挙げられる。今回、資産防衛の機能とともに注目したい点は(3)だ。なにせ今の日本は、預金利息がほぼゼロ。国債や社債などの金利も史上最低レベルだ。とりわけ、資産運用のコア商品ともいわれる「投資信託」に至っては、管轄する金融庁の森信親長官が都内であった講演で、投信を販売する金融機関に対して、
「手数料稼ぎが目的の、顧客不在の経営になっている」
などと批判する始末。実際、金融庁金融審議会の調べで、国内で販売される投信の販売手数料の平均は3.2%(純資産残高上位5商品)。一方、米国は0.59%(同)。利回り以外でも魅力がないのが実情だ。