●成長のパイを分ける
主因は、日本人が資産の半分以上を現預金で保有し、株式や投資信託への分散投資をわずかしか行ってこなかったこと。さらに、投資対象が国内に限定され、国際分散投資になっていなかったことにある。柴山さんは言う。
「92年から100万円を元手に毎月3万円ずつ積み立て、国際分散を行っていれば、年率5.8%のリターンが得られました。その間、アジア通貨危機やリーマン・ショックなど数々の危機がありつつも、世界全体のGDPが3倍に拡大したため、果実を分け合えた」
一方、同じように積み立てた資金を日本株だけに投資していた場合、リターンは年率1.7%。しかも25年のうち15年間は元本割れだったという。
「この間、日本のGDPは1.2倍にしかならなかった。俗に言う『失われた20年』です。パイ自体が大きくならなかったので、果実を分け合うことができなかった。儲けようとすれば、ゼロサムゲームに参加せざるをえない。その結果、一部の人はうまくいったけど、大多数は損をして、『投資は怖い』というイメージが定着してしまった」
柴山さんにはこんな個人的経験もある。マッキンゼー時代、アメリカ人の妻の母親から、自分たち夫婦の資産も運用してもらいたいと頼まれ、資産の額を聞いて仰天した。収入も暮らしぶりもほぼ同じくらいだった自分の両親の資産額の10倍を超えていたのだ。
理由を考えると、実家は、バブル崩壊と共に株投資から手を引き、貯金と保険だけという日本人の典型的な運用をしていた。対する義理の両親は、若い頃から長期・積み立て・国際分散投資を続けていた。この経験が、「日本でも国際水準の投資手法を広めたい」と起業するきっかけになったという。
一口にロボアドといっても、会社によって投資先や手数料の体系にも違いがある。最低投資額が30万円と高めに設定されたウェルスナビは、顧客の9割が投資経験者なのに対し、最低投資額が10万円のTHEOは初心者が9割を占めるなど、利用者層も異なる。各社、シミュレーションは無料なので、いろいろ試してみることが可能。チャレンジする場合は、サービスの違いをしっかり比較してみることが大切だ。(編集部・石臥薫子)
※AERA 2017年7月17日号