●東急、近鉄は保存に不熱心

 一方、まったく保存に熱心でない鉄道会社も。首都圏だとたとえば東京と横浜を結ぶ東急電鉄は「スペースがないため」(広報)車両を車庫には保存していない。渋谷駅前にはかつて東急東横線などで活躍した5000系、通称「青ガエル」が渋谷区により設置されているが、車両後部が切り取られてしまっている。関西で最も大きな民間鉄道会社である近畿日本鉄道も、大正時代に走っていた1両を除き保存はされていない。担当者はその理由に保存の難しさをあげる。

「ステンレス車ならまだいいのですが、近鉄では鉄かアルミの車両しかない。外に置いておくと塗装にひびが入って雨が入り込み塗装がはがれ、さびが回っていく。屋根の下で保存できるならいいのですが、そういうスペースも少ない」

 車両の保存は、あくまで鉄道会社の心意気に支えられているのが現状だ。小田急の担当者は「今保存している形式の車両をすべて廃車にすることはありません」と語るが、今後輸送量がさらに増えていけばさらに保存車両に割くスペースがなくなり、再びこういった問題が浮上することは十分考えられる。

 白川さんはこう語る。

「鉄道発祥の地・イギリスには国営の鉄道博物館があり、各社から廃車リストをもらって保存するものをピックアップする仕組みがあるが、日本では難しい」

 鉄道ファンも含めた一般人が保存に向けた努力をすることが必要、と白川さんは語る。

 3両を事務所敷地内に保存している男性によると、車両を近場に運ぶだけなら50万~60万円、レールを敷いてその上に固定すると800万円程度。また、3両の塗装を塗りなおすのに100万~500万円程度かかったという。

(編集部・福井洋平)

AERA 2017年7月17日号

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