保存車両の一部廃車を決断した小田急で今何が…(※写真はイメージ)
保存車両の一部廃車を決断した小田急で今何が…(※写真はイメージ)
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 小田急電鉄が、保存していた古い特急車両の一部を廃車にすることを決めた。鉄道車両の保存が進んでいる日本だが、スペースや維持費の問題も浮上する。市民の協力が必要だ。

 首都圏大手私鉄の小田急電鉄(本社・東京都新宿区)は新宿と神奈川・小田原、箱根を結び、有料特急「ロマンスカー」の運行でも広く知られている。6月末、その旧型ロマンスカーをはじめとする小田急保存の古い車両の大半を廃車にするらしいという噂がネット上に流れ、6月29日の株主総会でも質問が飛ぶほどの騒ぎとなった。

●複々線化の影響が

 鉄道の車両は新しい技術の導入やコストダウンを目的に定期的に入れ替えが行われ、古い車両は順次廃車になる。ただ、高度な技術を集約し沿線住民にも親しまれてきた車両を捨てることはもったいないと、一部車両については保存がされている。小田急では「SE3000形」(1957年導入)や「HiSE10000形」(87年導入)といったかつてのロマンスカー、「2200形」(54年導入)などエポックとなった通勤用車両など計8形式、22両を保存し、そのうち17両が喜多見検車区(東京都世田谷区)に置かれている。

 小田急によると今回、保有している形式のうち複数の車両があるものについて、その一部を廃車することになった。まず2012年まで活躍していたロマンスカー10000形3両のうち2両を解体するという。小田急は18年、約30年前から進めてきた複々線化工事が完了し、ダイヤが大幅に増発される。最も新宿駅に近い車庫である喜多見検車区にはこれまで以上に列車を留置できるようにする必要が出てきたため、保存車両の一部を解体して留置線を空けるというのが廃車の理由だ。

 そもそも車両の保存状況は、鉄道会社によって大きく異なる。JR東日本、東海、西日本はそれぞれ大規模な博物館を運営して保存車両を展示し、民鉄でも東武鉄道は「東武博物館」(東京都墨田区)を持ち、列車11形式などの保存車両を展示。西武鉄道も埼玉県の車庫に14形式16両を保存している。保存鉄道に詳しい鉄道ライターの白川淳さんは、「日本は世界的に見ても圧倒的に鉄道会社がしっかり車両を保存している」と語る。

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